[日商簿記3級]仕訳の切り方を身に着けよう!
今回は日商簿記3級における、仕訳の切り方について、具体的な流れを見て行きましょう。
仕訳とは
簿記を勉強する上で基本になる作業が仕訳になります。
ここでは仕訳のルールを説明した上で実際にどの様な手順を踏んで仕訳を切っていくかを具体例を出しながら説明していきます。
勘定科目を知る
簿記の仕訳を切る前に、勘定科目にどのようなものがあるか、ざっと見てみましょう。
貸借対照表に載るもの
会社の資産や負債に関わる情報を載せた表が貸借対照表でした。
まずは貸借対照表に載る勘定科目から見ていきます。
資産
資産とは、お金そのものやお金を生み出すもの、換金できるものなど、総じて価値があるものを意味しています。
例えばあなたが所有する財布の中に現金5万円入っているとします。すると、その現金5万円はあなたにとっての資産になります。
また、その財布自体が高級なブランド品で、売ると2万円の価値があるとします。その場合は当然、財布も2万円の価値がある資産になります。
この他にも家や土地、株など、売ればお金になるもの、それに見合った価値のあるものは資産として計上(=数えることが)できます。
もちろん、誰かに貸しているお金や物品もいずれは帰ってくる(=価値のある)ものです。したがって、それらも資産として計上します。
物を売った場合に、後から払うからといった名目で渡される手形や掛金も資産となります。
例:現金・当座預金・売掛金・受取手形・備品・土地・建物・有価証券・貸付金
貸借対照表において、資産は以下の位置に書くようにします。
資産 | |
負債
負債は言ってしまえば借金のようなもので、いずれ支払わなければいけないものになります。
友人から5千円借りたら後々5千円返さなければ行けないので、負債として扱います。
また、物を買った場合にお金は後払いといった名目でツケてもらう場合も負債として扱います。
貸借対照表において、負債は以下の位置に書くようにします。
負債 | |
資本
資本とは資本主が経営のために会社に出資した額です。
また、その出資金に関しては資本主からの借入金として見ることもできるので負債と似たような扱いになります。
資本額は一般的に以下のようにして算出可能です。
資本=総資産-総負債
貸借対照表において資本は以下の位置に書くようにします。
資本 |
損益計算書に載るもの
貸借対照表と合わせてもう一つ、忘れていけない表がその期にいくら設けたかを表す損益計算書でした。
損益計算書に載る科目も見てみましょう。
収益
収益は読んで字のごとく、いくら儲かったかを表す数値です。
物やサービスが売れたときの売上はもちろんのこと、お金を貸した時にもらえる利息や有価証券の価値が買った時より上がった場合の、見込み高も収益として計上します。
例:売上・受取利息・有価証券評価益
損益計算書において収益は以下の位置に書くようにします。
収益 |
費用
費用は会社が営業活動するに伴って出ていくお金を表します。
物を買ったときの仕入代金や従業員の給料、お金を借りた場合の支払い利息などが含まれます。
また、投資目的で買った有価証券の価値が下がったときや会社が所有している建物、備品などの価値が経年劣化した際も費用として計上します。
例:仕入・給料・有価証券評価損・減価償却費
損益計算書において費用は以下の位置に書くようにします。
費用 |
貸借は必ずバランスさせる
仕訳を切るときは必ず貸方(右)と借方(左)をバランスさせなければいけません。
例えば5,000円の商品を現金を支払って仕入れた場合は次のように仕訳を切ります。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
この仕訳の意味として、まず借方に注目してみると費用として5,000円が発生した。
次に貸方に注目してみると、資産としての現金が5,000円なくなった。
と言った意味になります。
つまり仕訳では一つの取引を2つに分けて記入していることになりますね。
ここで、貸方、借方それぞれの意味と、貸方、借方に各勘定が来た場合の意味を見ていきましょう。
貸方
貸方 |
貸方は右側に来る勘定を指します。貸方をひらがなで書くと かしかた となり、 し が右に払うので右側に来ると覚えましょう。
それぞれの勘定科目が貸方に来た場合の意味は以下の通りです。
資産の減少
仕訳を切ったときに資産が貸方に来た場合は資産の減少を意味しています。
現金5,000円が貸方にあれば会社から5,000円が出て行った事を意味しています。
資産 | |
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 5,000 | 現金 (資産の減少↓) |
5,000 |
負債の増加
仕訳を切ったときに負債が貸方に来た場合は負債の増加を意味しています。
買掛金300円が貸方に来れば、会社が300円のツケで物を買ったことを意味しています。
負債 | |
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 300 | 買掛金 (負債の増加↑) |
300 |
資本の増加
仕訳を切ったときに資本が貸方に来た場合は資本の増加を意味しています。
資本金5万円が貸方にあれば会社の資本金が5万円増えたことを意味しています。
収益の発生
仕訳を切ったときに収益が貸方に来た場合は収益の発生を意味しています。
売上3万円が貸方にあれば3万円の物が売れ会社にそれだけの収益が発生したことを意味しています。
収益 |
だから増えた時は貸方でチュね!
費用の取消
仕訳を切ったときに費用が貸方に来た場合は費用の取消を意味しています。
仕入5万円が貸方にあれば5万円の仕入を取り消したことを意味しています。
費用は
費用 |
で損益計算書の上では左側だから、貸方に来たときは取り消す形でチュね!
基本的に費用が貸方に来ることは少なく、例えば品質に問題があったから返品をしたり、間違って費用に計上してしまったから訂正として逆仕訳をしたり等、限定的な場合が多いです。
借方
借方 |
借方は左側に来る勘定を指します。借方をひらがなで書くと かりかた となり、 り が左に払うので左側に来ると覚えましょう。
それぞれの勘定科目が借方に来た場合の意味は以下の通りです。
資産の増加
仕訳を切ったときに資産が借方に来た場合は資産の増加を意味しています。
売掛金3,000円が借方にあれば何らかの物を売り、3,000円を将来的に貰える権利を得た事を意味しています。
負債の減少
仕訳を切ったときに負債が借方に来た場合は負債の減少を意味しています。
支払手形700円が借方にあれば700円のツケを返済するなどして将来払うべきお金がなくなった事を意味しています。
資本の減少
仕訳を切ったときに資本が借方に来た場合は資本の減少を意味しています。
資本金3万円が借方にあれば会社が株を買い戻したなどして資本金が減少したことを意味しています。
収益の取消
仕訳を切ったときに収益が借方に来た場合は収益の取消を意味しています。
売上5万円が借方にあれば売った物に欠陥があり5万円分の値引きを行ったなどして利益を取り消すことを意味しています。
収益が借方に来ることは少なく、値引きや割戻があったとき、間違って仕訳を切った場合の訂正仕訳などに限られます。
費用の発生
仕訳を切ったときに費用が借方に来た場合は費用の発生を意味しています。
仕入3万円が借方にあれば3万円分の商品を仕入れるために3万円分の費用が発生したことを意味しています。
貸借の位置には意味がある
上記の通り、それぞれの勘定科目が貸方に来ているか借方に来ているかで意味合いが変わってきます。
貸方に資産があり、借方に費用がある場合は資産を削って費用を払った、のように意味を考えながら考えることで仕訳を切り間違える可能性がぐっと減ります。
実際の仕訳の手順
では実際に仕訳の問題を1問解きながらどのような順に仕訳を切っていくのかを解説していきます。
やっている意味や勘定はまだ覚えなくていいので、漠然とこんなことをしているのか~と眺めてみてください。
例題
解説
ではさっそく、問題を解いていく手順を書いていきます。
最初の状態を確認する
まずは最初どのような状態であるかを考えます。売掛金は資産、当座借越は負債なので以下のような貸借対照表になっていることが考えられます。
現金 ××× 売掛金(A商事) 1,000 その他の資産 ××× |
当座借越 300 |
資本金 |
動く全体の勘定の金額を把握する
問題から読み取れる勘定科目として売掛金、当座預金、当座借越があります。
したがってこれらの勘定科目が出てくることは想像がつきますね。
大きい金額から書く
仕訳を行うときは全体の金額のうち、大きい額から処理していく方が分かりやすくスムーズに解けます。
今回の場合、売掛金1,000円を回収したことが分かるので、資産の勘定である売掛金が消えることになります。
資産が減少する場合は貸方に書くのでした。
借方 | 貸方 | ||
??? | ??? | 売掛金 | 1,000 |
??? | ??? |
-の物を0にすることを考える
次に当座預金にお金が入ってきますが、ここで負債の当座借越がある事に注目します。
お金を借りている状態で手元にお金が入ってきた場合は利子の発生を抑えるためにもいち早く返済したいものです。
なので、まずは負債を0にします。負債は貸借対照表では貸方にあり、それを打ち消すので借方に書きます。
借方 | 貸方 | ||
当座借越 | 300 | 売掛金 | 1,000 |
??? | ??? |
このように、借金や負債などがある場合は真っ先に返済して帳簿上から消すようにします。
残りを埋める
最後に貸借をバランスさせるために残りの科目を記入します。
1,000円のうち300円は返済し、残りの700円が当座預金に振り込まれるので資産の増加(借方)に当たりますね。
借方 | 貸方 | ||
当座借越 | 300 | 売掛金 | 1,000 |
当座預金 | 700 |
仕訳の流れは以上となります。
仕訳・まとめ
今回は簿記の仕訳に必要なルールや用語をいくつか紹介しました。
内容が盛りだくさんで???だった方もいらっしゃるかもしれませんがここでは10%程の理解で構いません。
次回は最も一般的な商品売買を見ていきます。
福井県産。北海道に行ったり新潟に行ったりと、雪国を旅してます。
経理4年/インフラエンジニア7年(内4年は兼務)/ライター5年(副業)
簿記2級/FP2級/応用情報技術者/情報処理安全確保支援士/中小企業診断修得者 など
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません