[日商簿記3級]当期に貸倒が発生したときの処理[無料講座・例題付き!]
今回は日商簿記3級の当期に貸倒した場合について学習します。
貸倒について
毎年日本では10,000件近い企業が倒産していると言われています。その為売掛金や受取手形などの債権を相手に貸したまま倒産されてしまい回収できなくなる場合もあります。
取引先の企業に債権(貸し)があるまま、倒産された場合のことを貸倒と言います。
貸倒にかかわる処理を行うときに必要な勘定科目に貸倒損失・貸倒引当金・貸倒引当金繰入があるので、ここではそれぞれの勘定をさらっと紹介し、後半で実際の取引を例に詳しく見ていきましょう!
貸倒損失
相手方に対して売掛金や受取手形といった債権(=後からお金をもらえる権利)を持っていて倒産された場合、実質その権利は消失することになります。
この場合に権利の消失を費用ととらえ、貸倒損失と呼ばれる費用の勘定科目を用います。
貸倒引当金
決算日に残っている債権や債務に対して、将来的に貸し倒れる可能性がある場合あらかじめ用意をしておく(保険をかけておく)ことで予想外の費用を抑えるようにします。
この保険に当たる額を貸倒引当金と言います。ちなみにこの貸倒引当金は資産のマイナスを意味する少しややこしい科目であり、財務諸表にも資産側にマイナスとして書かれることがあります。
売掛金 〇〇〇円 受取手形 □□□円 貸倒引当金 ▲×××円 |
|
貸倒引当金繰入
貸倒引当金繰入とは貸倒引当金を設定するときの相手科目になります。
費用の役割をはたしており、繰り入れる段階では実際のお金の動きがないことに注意しましょう。
当期に貸倒損失が発生した場合
当期に貸倒損失が起こった場合です。当期と強調しているという事は前期もあるわけですが、当期の方が処理はシンプルです。
債権がある相手が貸倒た場合の処理
得意先の倒産などで売掛金や買掛金が回収できなくなることを貸し倒れと言いました。
売掛金が貸し倒れてしまった場合はその売掛金を回収できない(=消失する)ので、貸方に記載して減少させます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 (資産の減少↓) |
8,000 |
借方科目には当期に発生した分の売り上げからの売掛金が貸し倒れたとのことなので、貸倒損失を用いて処理します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒損失 (費用の発生↑) |
8,000 | 売掛金 | 8,000 |
決算日における貸倒引当金の設定
前の例では貸倒をしたときにそのまま損失として費用が発生してしまいました。本来であればこのような事態に備えて貸倒を見積もり保険をかけておくのが一般的です。
令和2年3月31日 決算日において、売掛金の期末残高100,000円について、差額充填法により3%の貸倒引当金を設定する。
①貸倒引当金を設定していない場合
②貸倒引当金が1,000円残っている場合
③貸倒引当金が4,000円残っている場合
用語の説明
期末
期末とは、その期の最後の日を言います。例えば令和元年度が令和元年4月1日~令和2年3月31日の場合、令和2年3月31日が該当します。
差額充填法
差額充填法とは、貸倒引当金として見積もった金額と期末に実際に残高として残っている金額の差額分だけを補充する方法です。
すごい極端な例ですが、100mlの水を図りたいときに、すでにビーカー内に水が30ml入っている場で、残り何ml水を入れれば100mlにできるかを考えます。 答えは100-30=70なので、ここでは70が差額充填法によって導かれた値になります。
①貸倒引当金を設定していない場合
貸倒引当金を設定していない場合は比較的計算が簡単です。
いくら設定すべきかをまず計算する必要があり、100,000円×3%より3,000円と導き出されます。この3,000円が貸倒引当金として貸方に記載されます。
冒頭でも述べた通り、貸倒引当金は負の資産として見られる場合と負債として見られる場合があり、財務諸表では必ずしも貸方に来るわけではないことも覚えておきましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 (負の資産の増加↑) |
3,000 |
相手科目に関しては貸倒引当金繰入を記入します。
貸方に貸倒引当金がある時は基本借方はこの勘定になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金繰入 (費用の発生↑) |
3,000 | 貸倒引当金 | 3,000 |
②貸倒引当金が1,000円残っている場合
貸倒引当金を設定している場合は差額充填法により繰入額を算出しなければいけません。
設定される額は100,000円×3%より3,000円であり、すでに残高に1,000円残っているのでその差額分2,000円が繰入額になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金繰入 | 2,000 | 貸倒引当金 | 2,000 |
③貸倒引当金が4,000円残っている場合
あまり出ないパターンではありますが、設定される金額よりも残高として残っている金額が多い場合は減らして帳尻を合わせます。
額は設定額3,000円-残額4,000円=-1,000円となります。
貸倒引当金を減らすので、マイナスのマイナスはプラスという事で借方に貸倒引当金を記載します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 (負の資産の減少↓) |
1,000 |
差額充填法で貸倒引当金を減らす場合は貸方には貸倒引当金戻入の勘定科目を使用します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 1,000 | 貸倒引当金戻入 (収益の発生↑) |
1,000 |
当期貸倒・例題
実際に例題を解いて問題に慣れていきましょう。
問題
金額は3桁ごとにカンマで桁区切りをして半角で入力すること(iOSの一部の環境以外は自動入力されます)。
(例:現金 500、商品 1,000,000)
使える勘定科目は以下のものとする。
勘定科目:[売掛金][受取手形][貸倒引当金][貸倒損失][貸倒引当金繰入]
問1
得意先愛知商事が倒産し、受取手形2,000円が貸し倒れた。この段階で貸倒引当金は設定していない。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
問2
決算日において、売掛金5,500円と受取手形4,500円の期末残高について3%の貸倒引当金を設定する。なお、貸倒引当金の期末残高は100円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
解説(クリックで展開)
当期貸倒・まとめ
今回は期中に貸倒が発生した場合の処理を見てきました。
差額充填法は3級の中でも苦手意識を持つ方が多いので、計算方法をしっかりと押さえておきましょう。
次回は前期に発生した債権が貸し倒れた場合について学習していきます。
福井県産。北海道に行ったり新潟に行ったりと、雪国を旅してます。
経理4年/インフラエンジニア7年(内4年は兼務)/ライター5年(副業)
簿記2級/FP2級/応用情報技術者/情報処理安全確保支援士/中小企業診断修得者 など
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