労働保険(労災保険・雇用保険)[FP3級講座]
今回はFP3級で問われる労働保険について学習してきます。
労働保険
健康保険は業務外での病気やケガ、死亡などに給付される保険でしたが、労働保険は業務上や通勤途上(家と会社間の合理的な経路及び方法)での障害に関して給付される制度です。
労働保険にはさらに労災保険と雇用保険に分割されます。
労災保険
業務上における病気やケガ、障害などを業務災害、通勤途上における病気やケガ、障害を通勤災害と呼びます。
対象者はすべての労働者であり、アルバイトやパートタイマー、日雇い労働なども含まれます。
また、原則として1人以上の労働者を使用する事業者は必ず加入する必要があります。
肝心の保険料については業務内容ごとに異なっており一律ではなく、保険料は全額事業主が負担する点も健康保険とは変わってきます。
具体的な給付内容は以下の通りです。
業務災害 | 通勤災害 | |
病気・ケガ | 療養補償給付 休業補償給付(※) 傷病保障給付 |
療養給付 休業給付 傷病年金 |
障害 | 障害補償給付 | 障害給付 |
介護 | 介護保障給付 | 介護給付 |
死亡 | 遺族補償給付 葬祭料 |
遺族給付 葬祭給付 |
※労働者が休業した場合、4日目から給付基礎日額の60%が支給
また、労災保険は基本的に社長や役員など労働者ではない人は対象外ですが、労働者としての側面が強い中小企業事業主や大工等は労災保険に任意加入できる制度があり、これを特別加入制度と呼びます。
雇用保険
労働者が失業した場合に必要な給付金を受け取ったり、再就職の援助を受けられる制度を雇用保険と言います。
主な対象者は企業の労働者で、保険料は事業主と労働者で負担します。ただ、健康保険と異なり労使折半(50:50)ではない点に注意です。
給付内容は
- 基本手当
- 就職促進手当
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
- 育児休業給付
の5つに分けられます。
1.基本手当
基本手当は失業者に対する給付で、一般的には失業保険とも呼ばれています。
労働者が失業した場合に離職前の6ヵ月間の賃金の45~80%が支給されます。
給付日数は失業の理由(自己都合か会社都合か)によって変わってきます。
①自己都合の場合
被保険者期間 10年未満 |
被保険者期間 10年以上~20年未満 |
被保険者期間 20年以上 |
|
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
②会社都合の場合
被保険者期間 1年未満 |
被保険者期間 1年以上~5年未満 |
被保険者期間 5年以上~10年未満 |
被保険者期間 10年以上20年未満 |
被保険者期間 20年以上 |
|
~30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | |
30歳以上~35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上~45歳未満 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上~60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上~65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
また、受給の要件としては自己都合の場合離職前に2年間で、被保険者期間が12ヵ月以上、会社都合の場合離職前の1年間で被保険者期間が6ヵ月以上あることです。
受給するにあたっては近隣のハローワークに離職票を提出し、求職申し込みをします。
求職申込後7日は支給されず(待機期間)加えて自己都合退職の場合はさらに3ヵ月間支給されません。
2.就業促進給付
一定の条件をクリアした基本手当の受給者が再就職に成功した場合やアルバイト、派遣などに就業した際に就業促進給付が支給されます。
会社に正社員として(就業手当の対象となる職業で)就職した場合の給付を再就職手当、アルバイトなど就業手当の対象外の職業に就業した場合の給付を就業手当と呼びます。
3.教育訓練給付
就職に必要なスキルを得るために労働者が自分で費用を負担して訓練を受けた際、厚生労働大臣が指定した講座を受講し修了することで、その費用の一部が支給される制度を教育訓練給付制度と呼びます。
教育訓練給付はさらに以下の3つに分かれます。
- 一般教育訓練給付金
- 特定一般教育訓練
- 専門実践教育訓練給付金
一般教育訓練給付金
雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回のみ1年以上)の被保険者が、厚生労働大臣指定の教育訓練を受講し修了した場合に受けられます。
給付額は受講料の20%相当で、最大10万円までです。
特定一般教育訓練
雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回のみ1年以上)の被保険者が、厚生労働大臣指定の特定一般教育訓練を受講し修了した場合に受けられます。
給付額は受講料の40%相当で、最大20万円までです。
専門実践教育訓練給付金
雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回のみ2年以上)の被保険者が、厚生労働大臣指定の専門的かつ実践的な訓練を受講し修了した場合に受けられます。
給付額は受講料の50%相当(最大40万円、給付期間は3年)で、さらに資格取得し就職につながった場合+20%上乗せされます。最大56万円という値もおぼえておきましょう。
また、この専門実践教育訓練給付金を受給できる人で45歳未満の離職者に関しては受講期間中に雇用保険の基本手当相当額の80%が支給される教育訓練支援給付金と呼ばれるものもあります。
4.雇用継続給付
雇用継続給付や高齢者や、介護をしている人を対象に給付を行い雇用を継続させる制度です。
雇用継続給付にはさらに、高年齢雇用継続給付と介護休業給付があります。
- 高年齢雇用継続給付・・・被保険者期間が5年以上の60歳以上~65歳未満の被保険者で、60歳到達時の賃金月額と比較して75%未満の賃金月額で働いている人に対し、各月の賃金の最大15%相当額が支給される制度です。
- 介護休業給付・・・家族を介護するために休業した場合で、一定条件を満たした場合に支給されます。
5.育児休業給付
満1歳未満の子供を養育するために育児休業を取得した場合、休業前の賃金の67%(6ヵ月経過後は50%)が支給されます。
社会保険・例題
実際に例題を解いて問題に慣れていきましょう。
問題
問1
労働者災害補償保険(労災保険)の保険料は、その全額を事業主が負担する。(2014年/5月)
○
×
問2
雇用保険の基本手当を受給するためには、倒産、解雇および雇止めなどの場合を除き、原則として、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上あることなどの要件を満たすことが必要となる。(2019年/5月)
○
×
問3
雇用保険の教育訓練給付金のうち、一般教育訓練に係る教育訓練給付金の額は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の20%相当額であるが、その額が()を超える場合は、()が支給される。(2017年/1月)
1 10万円
2 15万円
3 30万円
解説(クリックで展開)
労働保険・まとめ
今回は労働保険について学習しました。
保障される金額や受給要件などは社会保険同様良く問われるので押さえておきましょう。
次回は公的年金について学習します。
福井県産。北海道に行ったり新潟に行ったりと、雪国を旅してます。
経理4年/インフラエンジニア7年(内4年は兼務)/ライター5年(副業)
簿記2級/FP2級/応用情報技術者/情報処理安全確保支援士/中小企業診断修得者 など
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