[日商簿記2級]出題範囲が改定?連結会計や税効果会計の概要は?[2021年対応]
日商簿記2級は国家資格ではないものの、あらゆる資格の中で人気が高くおすすめの資格です。
しかし、簿記試験は試験範囲が良く変わることで有名です。
せっかく勉強しようと思っても、
と言ったような疑問も生まれてくることでしょう。
特に3級と1級の板挟みの2級は顕著で、数年前のテキストの内容がほとんど対応していない・・・なんてこともザラです。
この記事では簿記2級の範囲に限定して解説していきます。
特に連結会計や税効果会計と言った1級から降りてきた範囲で高難易度とされている分野についても解説するので、対策の役に立てていただければと思います。
日商簿記2級の出題範囲はどのように変わる?
まず、日商簿記2級の出題範囲について、どのように毎回変わるかを確認してみましょう。
工業簿記はそこまで大きな変動なし
簿記2級は大きく分けて、第1問~第3問の商業簿記と、第4問~第5問の工業簿記から分かれています。
このうちの第4問~第5問である工業簿記に関しては毎年あまり改訂されません。
過去問との類題も多くパターンが決まっているので、対策が立てやすく得点源にしやすいと言えるでしょう。
商業簿記がよく改訂される
商業簿記に関しては度々改訂され、2級の範囲が1級や3級に輸出されたり、逆に1級や3級から2級に輸入されたりします。
直近の2017年にも大きな変化がありましたが、その前後にもちょくちょく改訂が入っているので受験の際は注意しましょう。
試験は難化傾向?
気になる試験の難易度ですが、残念ながら範囲が変わってから簿記2級は難化傾向とされています。
特に連結会計や税効果会計など、簿記1級の中でも難しいとされていた論点が下りてきたため得点しづらい傾向にあるようで、連結会計では簿記1級すらも凌駕するような難題がしばしばみられます。
簿記2級「これってもしかして・・・」
簿記1級「俺たちの連結会計の問題が・・・」
「「入れ替わってるー??!!」」
(2級の方はTwitterより画像を拝借しました) pic.twitter.com/K7ZzdTIaUi
— TS@診断士挑戦中 (@weblog_0601) November 19, 2019
特に問3の貸借対照表や損益計算書の問題でこれらの論点を出されるとほとんど得点できないまま終わってしまいます。
合格率も以前は30~40%がよく見られましたが、直近では
- 18.2%(156回)
- 28.6%(154回)
- 27.1%(153回)
- 25.4%(152回)
- 12.7%(151回)
といった具合に10%台20%台となっています。
合格率については以下の記事でも触れています。
2017年日商簿記2級に追加された範囲は?
日商簿記2級は度々出題範囲が改訂されていますが、特に大きな変動は2017年だと記憶しています。
具体的には先ほどご紹介した、連結会計や税効果会計が追加され、Twitter等の受験者の声を見ていると毎回阿鼻叫喚です。
これらの範囲を踏まえ、どの辺りの論点が追加されたのかを確認してみましょう。
1級→2級
まずは1級から2級に追加された内容です。
課税所得
以前は簿記2級では、「税引前当期純利益の○%を法人税、住民税および事業税として計上する」と言ったように、法人税の簿記的な処理方法が出題されていました。
そのため、法人税などの納付税額の基礎となる、課税所得を算出する過程はあまり出題されてきませんでした。
しかし、後述する圧縮記帳や税効果会計が範囲に加わるにあたって、課税所得=益金-損金で求められることや、費用と損金は同じ概念ではないことを理解しておく必要があるため、税効果会計が簿記2級の範囲に盛り込まれるようになりました。
圧縮記帳
圧縮記帳とは、国庫補助金や工事負担金など、国などからの支援を受け取った場合に法人税法上の課税の繰り延べを行う処理になります。
簿記1級ではよく出題されていたのですが、実務で広く普及していることから2級にも取り入れられることになりました。
この国庫補助金によって圧縮損を計上すれば課税所得が小さくなり、納税額を抑えることができます。
ちなみに、圧縮記帳には直接控除方式と別勘定を用いた積立金方式があり、簿記2級で出題されるのは簡易的な直接控除方式に限られます。
リース取引
リース取引とは、物件を一定期間借りて利用する取引になります。
実生活でもよく聞くほどに普及したため簿記2級の範囲で扱われることとなりました。
簿記1級の場合は利子抜き法での利息法や級数法による計算、セール・アンド・リースバック取引など高度な処理が問われますが、簿記2級では問われません。
また、貸し手側の処理も簿記2級では問われません。あくまでリース資産を借りて返済していく過程を解く問題が多いです。
外貨建取引
企業活動のグローバル化が進んだことで、大企業に関わらず中小企業においても海外との取引が盛んになりました。
筆者が務めていた片田舎の製造業でもドル建て取引等多く、当時の簿記2級の知識で経理を担当するのは難しかったように覚えています。
為替相場がどのように変動するのか、為替リスクのヘッジのためにどのような手続きがあるのかを押さえておく必要があります。
そのため、外貨建取引の中でも特に仕入れ・売上げといった企業の営業活動に関連する基本的な取引に限っては2級の出題範囲に含まれるようになりました。
一方、外貨建の有価証券取引や、外国の金融機関からの借り入れ、または外貨建の貸付金の取引などは中小企業で行われる取引として想定されていないため、1級の範囲のままとなっています。
税効果会計
税効果会計は、企業会計と税務会計による税額の差を調整するための会計上の処理になります。
税金を適切に期間配分するために必要な処理で、簿記2級においては引当金と減価償却費の超過額などの取引が出題されます。
収益、費用とは異なり、損金・益金と言った概念が出てくるため難易度が一気に跳ね上がります。
連結会計
連結会計は親会社と子会社の大きな一つの会社としてみなし、外部に財務諸表を公開するために身内間の取引を相殺するための処理になります。
以前からの範囲で、本支店会計と呼ばれるものがあったかと思いますが、それがさらにスケールアップしたものだと思っていただいて問題ありません。
連結会計に関しては難易度が非常に高くなる傾向があり、簿記1級レベルの連結会計問題を解いたことがある筆者でも、なぜか簿記2級で最近出題された連結会計問題は解けませんでした・・・
他の受験者の報告を見ても、この分野だけは0点だったと言った声が後を絶たないレベルです。
3級→2級
次に、3級から2級に繰り上げられた範囲も確認してみましょう。
2級受験者は3級をすでに持っている方も多いと思うので、軽く触れるだけにしておきます。
手形割引・裏書
手形割引は満期を迎える前の手形を満期日までの利息や手数料を差し引いた金額で第三者に譲渡することす。要するに現金化みたいなものですね。
裏書譲渡も同様に満期日前に第三者に渡すことですが、こちらは買掛金支払のために債権を減らすような感覚です。
有価証券の取得・売却・利息
投資向けに有価証券を購入し、保有することで得られる利息や売ることで計上される利益・損失の仕訳処理を行います。
配当金の受取
株主配当金を受け取った場合の仕訳処理になります。
配当金を支払う処理は簿記1級がメインです。
減価償却(直接法)
減価償却法には減価償却累計額と言った勘定科目を用いる間接法と、そのまま固定資産等の資産価値を減少させる直接法に分けられます。
そのうちの直接法が日商簿記2級の範囲になりました。
日商簿記2級から除外された内容は?
逆に日商簿記2級から3級に降りた科目もあります。
ただし、簿記2級は3級の範囲も包含していることから、いずれにしても対策しておかなければいけないことに変わりありません。
商品券
商品券を発行した場合や受け取った場合の仕訳処理は3級の範囲になりました。
仕入値引・売上値引
購入したり売上たりした商品を事後的に値引きする処理も、3級の範囲となりました。
簿記2級の新範囲に対応するために
簿記2級の新範囲に対応するために、以下のポイントはしっかりと押さえておきましょう。
なぜ範囲改訂があるのかを把握する
そもそもなぜ、簿記はよく範囲改訂されるのか理解しておく必要があります。
日商簿記は国内の簿記試験の中でも最も有名な資格です。
そのため、企業からの期待も大きく、資格を通して実務に活きるスキルを身に着けておく必要があります。
簿記2級を取得しているのに知識がなくて実務に対応できない。それでは企業からの資格の評価が駄々下がりになってしまいますよね。
加えて近年はIT化・グローバル化も話題です。
電子商取引が盛んになり、債権債務が電子化されつつあります。また、海外の会計方法も知っておく必要があります。
このように、時代の流れに対応するために度々範囲改訂が行われています。
最新のテキストを用意する
実務に即するため範囲改訂が盛んと書きましたが、簿記2級も結局のところ、試験です。
実務経験がいくらあってもそれだけで対応できるとは言えず、しっかりと試験対策をしなければ合格は難しいでしょう。
試験対策にはテキストが必要なので、最新のテキストを用意して試験に臨んでください。
古いテキストは古本屋やフリマアプリでは、お手軽価格で手に入れられます。
しかし古いテキストを利用すると試験範囲に対応できず、新しい論点を勉強できなかったり、範囲外になってしまった内容を勉強することになったりとリスクを伴います。
多少お値段ははりますが、最新のテキストを用意して試験に臨みましょう。
独学で難しい時は通信講座もあり!
連結会計や税効果会計が範囲に含まれる前は独学でも合格は可能でした。
しかしこれらの新論点が入った今では実務経験も必要となり、独学で勉強することは難しくなりつつあります。
すでに実務で経験済み!と言う方は問題ないかもしれませんが、「未経験で経理職になりたい!事務職に就きたい!そのために簿記を勉強する!」と言う方は今から実務経験を経て簿記を受けると言うのも理想的ではありません。
そのような場合は通信講座を利用するのが良いでしょう。
通信講座では最新の試験範囲に対応した講義が用意されており、テキストも各自準備する必要がないので受験者の負担がぐっと減ります。
また、学習スケジュールの管理だったりスキマ時間を活用して知識のインプット・アウトプットを行えるアプリをリリースしていたりする講座もいくつもあります。
特に筆者がおすすめするフォーサイトではManabunと呼ばれるeラーニングアプリが利用できるので、興味がある方は利用してみてください!
こちらのフォーサイトはフルカラーのテキストやハイビジョン講義動画など、クオリティの高い教材が揃っており、受講者からの評判も非常に良いものとなっています。
筆者自身も教材を提供させて頂いてレビュー記事を書いているので、興味がある方は目を通してみてください。
もちろん、フォーサイト以外にも簿記を取り扱っているスクールは多いので、気になる方は以下の記事もあわせてご覧ください。
簿記2級に合格するためのコツ
最後に、簿記2級に1発合格した筆者から合格するためのコツやテクニック、アドバイスを紹介しておしまいにしようと思います。
仕訳問題・工業簿記は得点源に
簿記2級の問題のうち、第1問は仕訳問題、第4問・第5問は工業簿記となっています。
第1問に関しては少し難しい問題も含まれますが、ある程度パターンが決まっているので完答できます。
また、第4問・第5問の工業簿記も対策がしやすい事で有名です。
この3問を満点取れればそれだけで60点です。
簿記2級の合格点は70点なので、後10点取るだけで良くなり連結会計や税効果会計を最悪捨てても合格できる可能性が高くなります。
取れるところは取る、それが試験対策の王道なので、まずは簡単なところを完璧にすることに全集中しましょう。
3級は受験しておくべき
簿記試験はFP試験の様に、下位試験に合格している必要はありません。
そのため簿記3級を飛ばして2級をいきなり受験することも可能です。
しかし、簿記試験は下位試験の知識を基礎として作られているため、簿記3級を持っていないにもかかわらずいきなり2級に挑むのは中々に無謀です。
数年間経理業務をした経験がある方や、勉強によほどの自信がある方は別として、初心者の方は簿記3級からスタートしましょう。
CBTを活用しよう!
簿記2級・簿記3級は2020年11月からCBT化しており、随時受験受付されています。
特に注目すべきポイントとしては再受験既定の
試験日の翌日より、次の予約が最短3日後以降で可能です。
(例:12月14日試験の場合、12月15日よりマイページにて予約実施が可能となり、選択できる日程は12月18日以降です)
と言う点です。
要するに、4日に1回受験できるので、お金と時間さえ許されれば1年間で90回以上受験できてしまう計算になります。
今までは年に3回しか受験できなかったため、チャンスが多くなったと言えますね!
もちろん、十分な試験対策を行わずに何回受けても結果は変わりませんが、1回1回のプレッシャーは大きく減るかなと思います。
CBT化に関しては以下の記事でもまとめているので、あわせてご覧ください。
日商簿記2級の出題範囲まとめ
今回は日商簿記2級の出題範囲について解説しました。
簿記試験は度々内容が改訂され、特に連結会計や税効果会計が追加された2017年以降、試験は難化していると言えます。
その分最新の動向を反映していると言え、資格の価値はさらに高まりつつあります。
特に税効果会計や連結会計など難易度の高い論点も多いですが、一方で工業簿記や仕訳問題は得点源にできる事は変わりません。
取れるところをしっかりとれば怖くないので、是非対策して試験に臨んでください!
福井県産。北海道に行ったり新潟に行ったりと、雪国を旅してます。
経理4年/インフラエンジニア7年(内4年は兼務)/ライター5年(副業)
簿記2級/FP2級/応用情報技術者/情報処理安全確保支援士/中小企業診断修得者 など
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